透明草子

百鬼夜行からはぐれてしまったので、仕方なく人間に擬態している

煙草子

胸から取り出した煙草の箱は、角が擦れて変形していた。安物のライターを無理やりねじ込まれたそれは苦しそうにも見える。大人の社会に対するほんの少しの抵抗のつもりで始めた嗜好品はやがて私が正気で働くための必需品となり、いつの間にか強く社会生活と…

きれいに磨かれた楽器がショーウィンドウの中で眠っている。 人の流れに沿って御茶ノ水駅へと運ばれそうになる。 その中で紺色のポロシャツを見かけた気がした。 雨は降っていないけどビニールの傘をさすと、周りの人と自分の周りにさっと溝が生まれ、人混み…

さよならを教えて、メモ感想1

一日目冒頭 「....!」 侵食....。 「....!」 同化....。 それは同化に相応しい行為だった。 性行為は同化する行為なんだろうか 血縁があり生き物として似ている者との性行為は好ましくない。天使と怪物、両極端の存在の同化で連想するのはガリヴァー旅行記の…

自殺企図した時のこと

大学2年の秋に、私は数回自.殺企図した。その中で一番死に近付いたと思われるときの事を書こうと思う。 自.殺願望自体は幼少期からあった。生活(苦痛)を続けるために苦痛に身をやつさなければならない無意味さは耐え難かったし、望まぬタイミングで交通事故…

記憶障害になった祖母について感じたこと

04:47 気分が可もなく不可もなく無なので、こういう時に祖母について感じたことを書いておこうと思う。 祖母は私が高校生だった頃に自転車で転倒し記憶障害になった。 そして祖母は新しいものから順に少しずつ記憶を失っていった。 最近はコロナへの危機感も…

今までの生活①

1998年東京生まれ。 これは、世界のさまざまな場所で、52Hzと呼ばれる孤独なクジラの鳴き声が検出され始めてから18年後のことであり、村上龍の小説「歌うクジラ」においてグレゴリオ聖歌を歌うクジラから不老不死の遺伝子が発見される24年前のことだ…

無題

僕はいったいどこに向かっているんだろう立ち止まりたいと思っていても歩き出せずにいても時間はこころを置き去りに流れ、望んでもいない未来に押し流されていく。水の入ったビンの中で希望を失って沈むのを待つラットのように、僕は流されている。アルジャ…

短文

窓の外に手を伸ばしたときに触れる、雨雫の分子と手の皮膚の細胞。 もしもこの二つを作る原子うちのひとつとひとつが、宇宙のどこかで恒星が爆発した時に一緒に生まれた原子だとしたら運命的な再開だと思う。 そしてまたつたい落ちて離れていく。 誰かの傘を…

好きなものについて(加筆中)

好きなものについて そのうち個別により詳しい感想を書きたい ①小説 透明感があり孤独感や喪失感を滲ませる小説が一番好き ▶︎インディアナ・インディアナ(レナード・ハント) 砂が溢れるように掌から時間や温もりが溢れていく感覚。凍った記憶の数々が少しず…

夜食あるいは朝食

5/31早朝 サイケな街にいつか打ち込んだ無数の弾丸の薬莢が、雨に打たれてしおれている。 サイケな街は回り続ける。霧の向こうの島でネオンの躁鬱が躍っている。 UFOの形のラブホテルは、人間のエネルギーを吸い取って宇宙に戻っていくらしい。 隠されたアポ…

自分が目を閉じている間、世界は消えているんじゃないかと思う。 目を閉じて、開いて、閉じて、開いて。 自室の天井と、壁にかかった魚類図鑑のポスターを眺めている。 昨日は何をしていたっけ 迫りくる氷の塊を避けながら、深海へと潜っていった。そういう…

僕は防波堤の上に立っている。 海の向こうでは巨大な入道雲をかきながらクジラか飛行船かよくわからないものが水面に影を落とし、そこが長い長い夜になったのでオウムガイ達は水面近くに集まってきたに違いない。 私は何かを待っている。しかし何を待ってい…

10月22日 野生の倫理

学科の友人δと悪童日記について話した。彼女の履修している授業で悪童日記を読む課題が出たらしい。 生徒が一人一人感想を述べるシーンで、韓国から留学している青年が「これは道徳ではなく倫理についての物語だ」と述べた言葉が印象に残っていると彼女は言…

10月21日 psi‐trailing

そっと羽を広げるように朝日が広がる青い雪景色のなかに柔らかく色彩が舞い降りてきて、小さな眠りを包み込む。鳥たちに導かれ私はどこか懐かしい知らない場所へ 気を抜くと現実逃避したい心はすぐに気に入っている曲の歌詞に吸い込まれて、教室の風景に存在…