透明草子

百鬼夜行からはぐれてしまったので、仕方なく人間に擬態している

さよならを教えて、メモ感想1

一日目冒頭

「....!」
侵食....。
「....!」
同化....。
それは同化に相応しい行為だった。

性行為は同化する行為なんだろうか 血縁があり生き物として似ている者との性行為は好ましくない。天使と怪物、両極端の存在の同化で連想するのはガリヴァー旅行記ラピュタ編で登場 するバルニバービの医者の考え。曰く、両極端の思想を持つ政治家の脳を繋ぎ合わせるこ とで調和の取れた人間が作れると言う。 こと、さよならを教えてにおいては調和とは言い難い状態らしい

怪物が僕に向かって口を大きく広げた。
粘膜質の口腔....大いなる深淵。
僕は負の絶対存在である『彼』に喰われながら、奇妙な感覚に包まれていた。

なんとなく絶対存在、怪物というとクトゥルフっぽい? クトゥルフ神話の化け物たちも、私は人の心の中から現れた存在なんじゃないかと思っ てる。
メモ、体内回帰

 

となえとの会話

となえのボイスの音量に比べてbgmがデカい。ExeファイルをWineで無理やり開いてるせい?現実の会話よりノイズや不安の方が脳内で支配的なのかな、とこじつけることもできる。

人と会話するのが苦手な僕にとって、彼女のような自分から話題を振ってくれる人間は、ありがたい存在である
それでついここにやってきてしまうのだが‥‥会話しているうちに、またぞろ苦手意識が首をもたげてくる。その繰り返し。

人に気を使うのは面倒だけど、孤独は埋めたいという傲慢な考え。

少女はうつむき加減でゆっくりと室内に入り、引き戸を閉めた。
僕は無関心を装って彼女から視線を外し、新しい煙草に火を点けた。

こういう時に手持ち無沙汰にならず様になる仕草ができるのが喫煙者のずるいところだと思います。

彼女の顔に見入る僕の顔が、少女の瞳の中に映っているのが見える。
少女もまた、僕の瞳の中に自分の姿を見ているのだろうか。
奇妙な合わせ鏡。

人見が睦月と見つめ合うシーンなのだけど、それ以上に同化や投影を連想させるシーン だと思う。 安部公房によれば「見る」行為には愛があり、「見られる」ことには憎悪がある。さよな らを教えてにおいても、人見君が少女達を見るのは好意があるからだけれど、少女たちの 純粋な瞳に醜悪な自分が射抜かれることについてはストレスを感じているように見える。 それから、ここで合わせ鏡という単語が出てきたことで、ここから先現実ともつかぬ不思 議な領域に入り込んでいく予感が湧く。

 

校内探索

真っ白い便器を見つめながら、僕は用を足している。 僕は、トイレの個室にいる時間が嫌いではない。
1 人きりになれる空間。小さな個室の心地よい閉塞感。

共感できる。自分もトイレの個室に隠れて、礼拝や合唱練習から逃れたことが何度もあっ た。人に溢れた校舎の中で数少ない、鍵を閉めて他人との関わりを拒絶できる場所。他人 との関わりから自分を守ってくれるシェルター。

階段を上がると、長い廊下にずらりとドアが並んでいる。
白っぽい廊下の風景は、傾いた陽の光の影響で、奇妙に霞んで見えた。
僕の中で、昼間、人がいる間は希薄だった『現実浮遊感』が強まってくる。

魅力的な文章だと思った。人がいない夕暮れは、現実でないどこかに行けそうな気がする。

 

 

睦月との邂逅

無垢な存在、無垢な魂の前では、自分の存在が不安定になる。
自分の『汚れ』が無残に露呈してしまう。 圧倒的な存在を前にして感じることができるのは、『恐怖』のみ。

自己の不安定さ。

 

望美との邂逅

bgm が他のどのキャラよりも良い。少し民俗調で爽やかな風を感じさせる曲だと思う。 そしてそれは、鬱屈とした世界に囚われている人見君が手を伸ばしても届かない世界で もある。高田望美は見た目もやっぱり一番可愛い。垂れ目なのに気が強そうなところとか。

彼女は、探るような目付きで僕のことをじっと見ていた。
警戒しながらも、こちらへの興味を隠そうとはしていない。
その立ち姿には、下手に声をかけると逃げ出してしまいそうな危うさがあった。
そう、ちょうど小鳥みたいに。

→『声をかける』 少女の魅力が表れている。

 

 

職員室、瀬美奈との会話

 物音に気づいた瀬美奈が、怪訝そうな顔を僕に向けた。いつも飲んでいるジュースを飲んでみたら全然違う味がした....そんな表情 だ。

 

太宰治の「斜陽」にこんな文がある。

朝、食堂でスウプを一さじ、すっと吸ってお母さまが、
「あ」と幽 かな叫び声をお挙げになった。
「髪の毛?」
スウプに何か、イヤなものでも入っていたのかしら、と思った。
「いいえ 」
お母さまは、何事も無かったように、またひらりと一さじ、スウプをお口に流し込み、すましてお顔を横に向け、お勝手の窓の、満開の山桜に視線を送り、そうしてお顔を横に向けたまま、またひらりと一さじ、スウプを小さなお唇のあいだに滑り込ませた。 太宰治「斜陽」
どちらも、人間関係の居心地の悪さがよく表れているシーンだ。
瀬美奈も斜陽のお母さまも、何か飲食物に違和感があったかのような反応をする。(瀬美奈のは例えだけれど)
口の中に入れた物に問題がある場合、体を害する可能性がある。口に入れたものに対する違和感というのは、例えばシャツに染みを見つけた時や、道端でガムのポイ捨てを見つけた時なんかよりずっと生理的な嫌な感覚なのだと思う。ひょっとすると、瀬美奈やお母さまは主人公達に生理的な嫌悪感を持っている部分があるんじゃないだろうか。