透明草子

百鬼夜行からはぐれてしまったので、仕方なく人間に擬態している

夜食あるいは朝食

5/31早朝

 

サイケな街にいつか打ち込んだ無数の弾丸の薬莢が、雨に打たれてしおれている。

サイケな街は回り続ける。霧の向こうの島でネオンの躁鬱が躍っている。

UFOの形のラブホテルは、人間のエネルギーを吸い取って宇宙に戻っていくらしい。

隠されたアポロ18号なんだよ。計画を隠すなら冷蔵庫の中がぴったりだ。

 

戦争は終わらない。戦争は終わらない。

掃除当番を押し付けて来ようとする女子や英語の再試に一喜一憂しながら過ごした生活はブラウン管テレビの中に誰かが残した忘れ物だ。

学生だった時、自分は散弾銃を抱えていた。

 

夜明けとともにオリオン座が落ちてきて街を押しつぶすだろう。

一つ目の月の反対側で、薄情な二つ目の三日月が嘲笑っていた。

天球図の向こうの暗闇で、年を取った誰かが泣いている。

球体の内側に浮かぶ上海では人を待ち続ける女性が乳白色の涙を流している。

 

道行く車からDaytonのcutie pieが流れたら、それはもう今日のエンディングの時間だ。

良い子も悪い子も幻視も寝具へと帰っていく。

 

薄青に白んでいく窓のふちから金色の陽が零れだす。

凡庸な生活にあっても朝は美しい。

 

三分ご飯を温めてバターと醤油かつお節を少々加えると夜食あるいは朝食が完成する。